地域再生のオーソリティ、上勝はやはり別格だ。
地域再生の先端地、聖地とも呼べる上勝町を訪れた。
酒蔵再生を手掛けていた頃に知り合った大西正泰さんが上勝におられ、樋渡市長の講演をオファーしたと言う。大西さんとは5年くらい、お会いしていないこともあり上勝へ。大西さんは、もともと中学校教師であり、その後は起業家教育をはじめ、地域再生コンサルティングなど幅広くご活躍中である。
大村市出身の気象予報士で活躍中の渡司陵太さんからも、「上勝は見ておくべきだ」と何度も言われていた。初めてお会いした時は、会話の80%以上が上勝のことで、iPadを使って私にわかりやすくプレゼンしてくれた。
上勝町は人口2000人弱のまちであるが、横石知二さんをはじめ、地元のおばあちゃんたちが手掛けた葉っぱビジネスはあまりに有名である。日本料理に添えられる「つまもの」に着眼し、スタートした。葉っぱビジネスは今や、年間売上2億円をゆうに超えるというのだから驚きである。大西さんによると、年収1000万円を超えるおばあちゃんもいるし、90代のおばあちゃんがタブレットを扱い受発注を行っているのだとか。
昨年、この葉っぱビジネスを巡る上勝町を舞台にした映画「人生、いろどり」が公開され、売上は続伸。前年対比120パーセントを超える勢いだとか。
町内に入ると、花木のビニールハウスを発見。
町内の小売店ではお米や調味料などが「はかり売り」されている。
2020年までに上勝町はごみをなくそうと、ゼロウェイスト運動を行っている。ごみの分別は34種類に及ぶ。生ごみは各家庭で自然に還す取り組みもされている。これらの取り組みは上勝の自然を守っていくという、大いなる理想に対する決意である。
宿泊した旅館の4階に、「いろどり」のオフィスがある。驚いたのは若い女性社員が多いこと。ほぼ全員が県外出身のIターン組だという。きっかけは、インターンシップに参加して上勝の魅力にはまってしまい、そのまま移住してしまったという方ばかりである。横石さんという魅力的で、情熱的な方が上勝モデルを作り、そこに、魅力的な人たちが集まってくる。先進的な取り組みを行っている地域には、前向きな人たちが次々と集まる。上勝にいる人たちはみんな生き生きとしているように見えた。
樋渡市長の講演は聴くたびに、新鮮なネタと強烈なインパクトの度合いが増していく。プレゼンテーションのセンスは私が知る限り、政治家としてはナンバーワンである。面白かったのは講演後の質疑応答の時間である。上勝町の方は一人ひとりの課題意識がシャープで、自分の役割、あるいは将来の上勝にどのように繋げていくかを意識したやり取りが多かったことだ。この手の質疑応答において、自分の知識や取り組みを延々と述べる種の人間がいるものだ。しかし、この日の質疑応答はハイレベルで充実した内容であった。
大村の場合は豊かなアクセスを活用して、上勝と同じように、移住を前提としたインターンシップを都市に仕掛けることは可能だと思う。子育て世代を増やしていくことは当然だが、都市からの移住者(定年世代)を増やしていく視点に立った仕掛けも求められているのではないだろうか。